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新宿と音楽

新宿と音楽

ミュージシャン志磨遼平

シンガーソングライター前野健太

「美学」を貫く男たち、
新宿で8年ぶりの再会

さまざまな音楽家が楽曲の題材にしてきた街、新宿。そんな街の音楽カルチャーを再発見するべく登場していただいたのは、ドレスコーズとして多岐にわたる活動を行う志磨遼平さん、そして数年前から新宿在住を公言するシンガーソングライターの前野健太さんだ。10年以上前から独自のスタイルで音楽活動を続け、確固たる存在感を放ってきた二人。共通のミュージシャンの友人は多いものの、8年前に出会って以来、きちんと話すのは今回が初めてだという。寺山修司、競馬、ジャズ、お酒……。街歩きを通して共鳴する点を数多く発見した二人は、新宿でなにを語り合ったのか。

インタビュー・テキスト:冨手公嘉
撮影:永峰拓也
編集:竹中万季、菅間碧

Story

今回の登場人物

志磨遼平

ミュージシャン

志磨遼平

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1982年生まれ。和歌山県出身。毛皮のマリーズのボーカルとして2011年まで活動、翌2012年1月1日にドレスコーズ結成。シングル『Trash』でデビュー。12月に1stアルバム『the dresscodes』、2013年、2ndシングル『トートロジー』、2ndアルバム『バンド・デシネ』を発表。2014年、キングレコード(EVIL LINE RECORDS)へ移籍。1st E.P.『Hippies E.P.』をもって志磨遼平のソロプロジェクトとなる。現体制になって初のアルバム『1』を発表。その後、ライブ・作品毎にメンバーが変わるという稀有な存在となり、4thアルバム『オーディション』を発表。2016年に俳優業開始。WOWOW連続ドラマW『グーグーだって猫である2 -good good the fortune cat-』、映画『溺れるナイフ』に出演。2017年3月1日、5thアルバム『平凡』を発表した。

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前野健太

シンガーソングライター

前野健太

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1979年生まれ、埼玉県出身。シンガーソングライター。2007年に自主レーベルよりアルバム『ロマンスカー』をリリースし、デビュー。2009年、ライブドキュメンタリー映画『ライブテープ』(監督:松江哲明)で主演を務める。近年はフジロックフェスティバルをはじめ大型フェスへの出演や、演劇作品への楽曲提供、文芸誌でのエッセイ連載、小説執筆など、活動の幅を広げている。2015年にはCDブック『今の時代がいちばんいいよ』を発表。2016年12月、新宿ピカデリーほかで劇映画初主演作『変態だ』(監督:安斎肇、原作:みうらじゅん)公開。2017年、『コドモ発射プロジェクト「なむはむだはむ」』で初の舞台出演。3月に初の著書となる『百年後』をリリースした。
(プロフィール写真:ホンマタカシ)

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 rendezvous 

男のこだわりは、細部に宿る

伊勢丹新宿店メンズ館伊勢丹新宿店メンズ館8階は「男の生活空間」がテーマ。時計、オーディオ、ステーショナリーをはじめ、大人が嗜みで収集するのにもってこいの逸品が並ぶ。メガネのエリアでは、世界各国のメガネ専業ブランドのなかから選ばれた優れた商品が鎮座。自身のスタイルに裏打ちされるように、身につける小物にもこだわりを持つ二人は、気になるメガネを手に取りながらぽつりぽつりと話し始めた。

普段からメガネを愛用しているという二人。前野さんは新宿や十条の古くからあるメガネ屋さんで購入しているそうだ。「行きつけの店のおじいさんが、ぼくに似合いそうなものが入ると電話してくれるんですよ。そこで扱っている商品は、ヴィンテージとも言いがたい絶妙なテイストで、他の人と被らないデザインがいいんです」と笑みをこぼす。一方、志磨さんは「ぼくは同じブランドの丸メガネを2本ばかし持っています。そろそろ他のタイプにも挑戦してみたいですね」とのこと。

前野:このメガネ、ぼくがかけるとヤブ医者っぽくない? 大丈夫かな(笑)。
志磨:お似合いですよ。ぼくのも普段とは違うイメージですがどうですかね?
前野:素敵です。メガネを選ぶのって、こだわりがあるからか時間かかるし、不思議と変な汗が出ませんか?
志磨:わかる。さっき、店員さんが「カメラでメガネをかけた姿を自撮りして、後で比較検討するのもいいですよ」と教えてくれました。
前野:なるほど。それは一理あるなぁ。

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邦楽ロックの系譜を辿るならココ

ディスクユニオン新宿 日本のロック・インディーズ館ディスクユニオン系列店で、唯一邦楽ロック・ポップスをフロア全体で扱っているのが、ディスクユニオン新宿。とりわけ1960~80年代の作品の品揃えは全国の系列店でも随一で、レアなコレクターズアイテムを見つけることもできるそう。店に続く階段の壁には、邦楽ロックの名盤のジャケットがペイントされており、スタッフの音楽に対する並々ならぬ愛が感じられる。

「10代の頃に影響を受けた邦楽アルバムを教えてほしい」と伝えたところ、黙々とレコード棚を物色し始めた二人。順調にLP棚を物色していた志磨さんが手に取ったのは、KING BROTHERS、サニーデイサービス、キリンジ、小島麻由美の4枚だ。特にキリンジのアルバムは思い出深い様子で、「ツアーのバンドワゴンでよく聴いていました。最近、CMソングにもなっている“エイリアンズ”という曲がぼく、大好きで」とのこと。前野さんは、「ぼくの10代といったら尾崎豊一択です。初めて買ったアルバムが尾崎でしたからね」と、懐かしそうに尾崎愛をにじませた。

前野:おっかしいな、尾崎(豊)のレコードがないなんて。最近買われてしまったのかなぁ。あ、この野鳥の鳴き声のレコード、キてるね。志磨さんはなにを選んだの?
志磨:このサニーデイサービスのアルバムはよく聴いていましたねぇ。
前野:良いチョイスですね。ぼくも好きです。
志磨:このキリンジのリイシュー盤、ずっと探していたので購入しようと思います。前野さんも、なにか買いますか?
前野:ぼくは尾崎のライブアルバムのCDを買って、ラジオで流そうかな。

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40年以上、時代を更新する音楽が鳴らされる場所

新宿LOFT新宿LOFTの創業は1976年。時代を更新するミュージシャンたちが歴史を刻んだライブハウスとして、40年以上に渡り音楽を愛する人たちに支持されている。泉谷しげる、BOØWY、シーナ&ザ・ロケッツ、スピッツなど、世代を超えたミュージシャンやオーディエンスがこの場所に集い、名実ともに新宿の音楽の拠点と言えるだろう。二人も過去にLOFTでの演奏経験があるだけあって、どこかリラックスした雰囲気。自然と、お互いのルーツや最近の趣味まで話が及んだ。

前野:志磨さんは「毛皮のマリーズ」っていうバンドをやっていたくらいだから、寺山修司が好きなんだよね。きっかけは?
志磨:演劇部に所属していた地元の友人がきっかけですね。寺山の詩集からラングストン・ヒューズ(1930年代から作品を発表していたアメリカの詩人)などの詩人を知りました。前野さんは寺山のどこが好きですか?
前野:競馬に関するエッセイがずば抜けておもしろいんだよね。影響を受けて、今も地方競馬に夢中で。あと、競馬場の予想屋さんがかっこいいんです。
志磨:ああ、わかります。ぼく、将来やりたいことリストに競馬が入っているんですよ。
前野:そしたら、今度ご案内しますよ。
志磨:それは嬉しいですね、ぜひお願いします!

志磨:前野さんとぼくは共通の知人がいたり、好きなものが一致していたりする。でも、8年前に対バンしたときはほとんど話さなかったし、今日はそれ以来の再会じゃないですか。
前野:20代の頃は、相当ピリピリしていたからね。昔、おとぎ話が主催で、3バンド一緒にイベントやったときも、直接会話をしなかったんです。そんなの、前代未聞ですよ(笑)。
志磨:かっこいいことやっている前野さんが、ズルいなって思っていたんです。前野さんの音楽は、タイトルや歌詞に込められた意図にすごく共感できるぶん、ひょっとしたらぼくが生み出せたかもしれない音楽なんじゃないか、みたいな思いもありました。でも、今日ちゃんと話せたから、ようやく変なバイアスなしで素直に音楽が聴けます。
前野:まったく一緒(笑)。変なバイアス、すごくありました。この企画を通じて仲良くなれるなんて、いい一日だね。